東京地方裁判所 昭和37年(ワ)6517号・昭36年(ワ)4819号 判決
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〔判決理由〕ところで、遺言は遺言者が死亡しなければ効力を発生せず、何時でも撤回し得るのであるから(民法第一〇二二条、当時の旧民法では同法第一一二四条)、遺言者が生存している限り受遺者のためになんらの権利が発生せず、従つて受遺者の地位は単なる事実上の希望ないし期待に過ぎない。しかしながら、不動産登記法第二条二号にいわゆる「将来ニ於テ確定スベキ」請求権とは、厳密な意味での請求権ばかりでなく、特定の不動産につき或る法律関係があつて、その法律関係より将来請求権の発生すべき場合、すなわち特定の不動産について請求権の発生すべき基本関係があり、将来これに或る法定条件のかわることによつて請求権の発生すべき場合をも含むと解すべきであるから(大審院大正六年七月一八日判決参照)、これには当事者間に、将来登記されるべき権利変動の生ずるような浮動的な関係の存在しているに過ぎない場合、換言すれば希望、期待ないし可能性の存しているに過ぎない場合をも含むというべく、従つて、受遺者の地位も同条二号の仮登記原因に該ると解するのが相当である。そうすると、本件土地について原告のためになされるべき仮登記は、綱七の遺言によつて利益を受ける原告が、遺言の効力の生ずるまで(綱七の死亡のときまで)有している期待ないし可能性を仮登記原因とする同条二号の仮登記であり、それにも拘らず、前記のように同条一号に該る仮登記がなされたのは誤りであつたと云わばならない。(もつとも、登記の実際において、登記申請当事者が同条一号の仮登記と同条二号のそれとを厳しく弁別し解釈しているものでないことは顕著な事実である。そして、このような登記の実情および前述のような仮登記そのものの効力を考慮すれば、同条二号の仮登記をなすべき場合に同条一号の仮登記を申請し、これが受理されて既に右一号の仮登記がなされてしまつた以上、右仮登記をもつて直ちに無効のものとすべきではないと解する。最高裁判所昭和三二年六月七日判決参照)(中田四郎)